「かっわいくねえ女だなあ」
「はい?」
隣の野蛮な変な男が呟く言葉に、間髪入れずに眉をひそめて見た。
ちくしょう、見るたびにいい男だと思う自分の目をくりぬきたいな。
切れ長の目がセクシー。いや、セクシーなんて思わないけど、私は。でもまあ、思う人もいるんじゃないですかね。私は思いませんけどね!
「お前ホントに女? なにこの負けず嫌いな性格。信じらんねー」
「……そういうあんたこそホントに男? 女を泣かすわ手を上げるわ、信じられない」
「お前が謝れば俺はこんな面倒なこともしないで済むし、お前の汚い顔見なくて済むんだけど」
「ふざけんな、お前が謝ればいいでしょ。そしたら私もあんたみたいなくさった男に関わらなくて済むし!」
ぎりぎり。
ふたりの歯ぎしりの音が響く。見下ろされているのが気に入らないけど私の方が背が低いから仕方ない。
くそう。185㎝くらいの身長があればいいのに。奴からは鼻の穴しか見れないくらい私の身長が高かったらいいのに。
あんたには鼻くそくらいがお似合いよ。
鼻くそ見せるのももったいないくらいだけどね!
私たちの歩く様子に廊下の学生たちは視線を送り、道を空ける。
なんだ。校内注目の鬼畜と乱暴者のコンビがそんなに珍しいか。ほっとけバカ—! 私だって私だって私だって好きこのんでこんな状態になってるわけじゃないんだからなー!
「はー……」
ため息でも吐き出さなきゃやってらんないくらいに憂鬱だ。
「大体どこ行くの? 一緒に帰るってあんた私の家も知らないじゃない……付き合わなくても……」
「お前が土下座すれば俺だってこんなことしねえよ」
「するか。あんたがすればいいじゃないの」
堂々巡りのこんな会話も若干飽きる。



