「ま、遅かれ早かれ、なんか絡むだろうとは思ってたけどねーはー、笑い疲れた……」
「あーもう、やめて。思い出したくもないー自分の性格に落ち込む時間くらい頂戴よー」
「今更よ、それこそ」
……厳しい。
怖いのに逃げ出せない。怖いけどそれ以上に負けたくない。
逃げるのは悔しいし。やられっぱなしじゃ割に合わない。
だからこそ、あいつとは絡みたくなかった。絶対ろくにならないことは目に見えていた。
しかもあんな人間でもない男と一緒にいたら私の人格まで疑われそうだ。
あーっ! なんで! 彼と彼女とかになってるんだろう!
私の初彼という歴史に名を刻むなんて!
「いやなら謝って別れたらいいじゃない」
「——いやよ」
ソレこそ今更。
後悔とやるせない気持ちで俯いていた顔を瞬時に上げて泰子を見た。
あんな啖呵切っておいて『ごめんなさーい』で済むはずもないし、したくもない。虫唾が走る。あいつに謝るなんて死んでもいやだ。
それにあいつのことだ、ねっちねち絡んでくるだろう。おそらく、勝ち誇った顔で……。
想像するだけで頭が爆発しそう!
「ま、それじゃあ諦めるしかないんじゃない? ほら」
私の言葉に、机に肘をのせて泰子はにやっと笑い教室の入口の方を親指で指した。
そういえば教室がなんだか騒がしい。
なんとなくことを理解して、むすっとした顔で扉の方を見ると思った通り獣が立っていた。
くそ新庄。あんな奴に名前があるなんてちょっと神様贅沢なんじゃない?
カスでいいのよあんなやつ。
「なに?」
教室内に入ってきた新庄に、視線を前に戻して彼を見ることなく言葉を発した。
わー言葉まで腐りそうだ。いやだいやだいやだ。気持ち悪い!



