「いや、まあちょっと待って……」
取りあえずなんでそんなことになっているのか。
自分の額に手を添えて、少し考えてから、興奮気味の泰子の肩にぽんっと片手を置いて頭を下げながら呟いた。
「ちょっと落ち着いて、なんでそんな噂が立ってるのかを……教えてくれませんかね?」
「——……澄、顔怖い」
そりゃ怖くもなるわよ!
下から覗き込む様に言った私の目は血走っていたでしょうよ。
あんな男とウワサされるなんて、私にマイナスしか与えないじゃない!
元々マイナスだって言うのに、これ以上マイナスになったら絶対零度の域に到達しちゃうじゃない!
誰も目を合わせてくれないんだよ! きっとあんなクソと付き合う変な女だ、とか思われるんだよ。
ウソでも最悪だ!
「だってー昨日、デートしてたんでしょう?」
「……デート?」
あのバカと? するかそんなもの。
「一緒に帰ってたって」
「や、確かにちょっと色々あって帰ったけど……」
そんなことで付き合ってる噂が立つなんて、小学生か。
確かに校舎から一緒だったら、いろんな人に見られはしたけれど。
「アイスクリーム一緒に食べてて、新庄があんなに優しいの初めて見たって」
「……あれは……違う……優しいとかもうそれ人違いレベルで違う。種族も違う」
いやがらせのためなんだけど。
誰が見てたのかは知らないけれど、その後の一連の流れを見てなかったのかよ。
変に顔がいいだけでこんな噂になるなんて本気で迷惑な男だな。
この世から姿形存在も消えればいいのに……。
はあーっとため息を落とすと、「でも」と泰子は話を続ける。これ以上なにがあるんだ。
「なにより新庄が付き合ってるって言ってたって」



