狂愛ゴング

な、なに?! ……っちょ、ぎゃあ!」


近づいてきてるのに全くスピードを落とさない泰子は、そのまま私にドスンと胸をめがけてぶつかってきて一緒に廊下に倒れこんだ。

止まれよ! イノシシか。一瞬呼吸止まったじゃないの!


「なんなの一体!」

「澄……あんた……」

「とりあえず……どいて?」


私の上に乗った状態で話を続けようとする泰子に、ため息混じりに言う。

そんなにも急いで話すようなこと? とりあえず落ち着いて。そして重いから早くどいて。

本当に、なにがあったか知らないけれど、泰子のこのすぐ興奮する所はどうにかして欲しい。


「あ、ごめんごめん。って! いや、それよりも!!」


私の言葉にはっとして体を起こした泰子は、すぐさま慌てて私に顔を近づけた。

どんな大事件なの。
さすがにここまで必死な泰子を見るのは初めてだ。


「あんた、新庄と付き合ったの?!」


……はい?


「なにがあったの? あんなに毛嫌いしてたのに……やっぱり顔!? 顔なの!? 澄も結局顔なの!?」


いやいやいや。
なに言ってるの?

言葉が出ないまま、泰子の顔をそれはそれは変な顔で見つめた。

なにがどうなってそうなったのか私にさっぱりわからない……冗談にも程があるし、そもそも話したのなんか昨日だけだって言うのに……。

なんでそんなことになってるの?


違和感に気づいてぱっと周りを見渡すと、そばで私たちのやりとりを興味津々で見ていた生徒たちが慌ただしく視線をそらした。

さっきから感じる視線の原因は……この話?