よく考えろ澄。
この男が人にお金払って食べ物与えるかな!? 餌付け!? もしかして餌付けなんじゃないの!?
そんなものには騙されないわよ!
「お金!」
「あ?」
慌てて財布をから小銭を取り出して新庄に差し出した。
いくらか分からないからとりあえず200円。
多分足りてないけど、小銭これだけしかないからその辺は大目に見て貰うとして……。
こんなもの受け取ったらなにがあるか分かったもんじゃない。
この男のことなんて鬼畜で外道だってことくらいしかしらないけど、今日ほんの少し話しただけで思う。
——なんの意味もなくこんなことをする男じゃない。
馬鹿だけどそれなりの防衛本能はあるんだから!
「いらねーっつってんだろ? なんだよ。別になんの意味もねえよ。財布また出すのめんどくさい」
「いや、でも!」
断る新庄に、こちらも負けじと食いついた。
そもそも男の子におごってもらうとかも初めてなんですけど。初めてが新庄とかこれいかに!
いや、でも。新庄にだけは奢られたくない。
怖いんですもの! 借りは作れない……! 絶対なんかある!
「いいんだって」
にこっと微笑まれる顔に、思わず手の力がするりと抜ける。
極上スマイルだ。今日何度も彼の笑顔を見たけれど、今までのクソ憎たらしい顔じゃない。すごく、自然で、すごく幸せそうな、笑顔。
顔だけはいいって絶対狡い。絶対せこい!
なんだかそれだけで騙されそうだ。騙されないけど!
負けるか!



