目を丸くしたわたしを、新庄は、長い足をドアにかけて腕を組みながら私に微笑む。
「……じゃあ……なんすか」
なんで私同級生のはずのこの男に敬語つかってんだよ! 自分が憎いっ!
でも怖いんだもん! むかつくけどこの男のオーラは普通じゃないんだもの!
「命令?」
聞くなボケが。
なにが命令だ。ふざけんなよ。
「いやで——……」
「あん?」
…一気に鋭い目つきで私の頭をまたもやボールのように掴むこの男は……人間ですか?
いくら負けず嫌いで怖い者知らずな私でも怖いです。ぶっちゃけこわいです。本当に怖いです。いっそのこと食べられた方がマシなんじゃないのってくらいなんです。
鬼畜。本気で鬼畜。
家畜だったらいいのに。
今までそこそこの恐怖を経験してるのに、この男はまた別格だ。
否応なしに神経が麻痺してしまう、なにかがある。
ドロドロしたなにかが、私にまとわりついてくるような恐怖がある。
やっぱりこいつ悪魔の化身なんじゃないの?
なにも言わない私を見て、観念したとでも思ったのだろう。
「じゃ、アイスでもどう?」
にっこり、と微笑んでから、私のアホ面を見て鼻で笑った。
・
……ああ、なんて居心地が悪いのだろう。
先に進む新庄の後ろを着いて歩いていく。
正直逃げ出そうかと思ったけれど、さすがにそれをするのは負けず嫌いの私には意地でもできない。
なんでだよ! と自分に突っ込みながら新庄の背中を見つめた。



