狂愛ゴング


先生にぐちぐちと小言を言われて、言い訳なんて聞こうともしてくれず、言おうとすれば小言が増えてかれこれ1時間ほど職員室で足止めされた。

ハゲじじい。
怒らなかったら気のいいおっさんなのに、怒りだすと長い上に、若干私には厳しいんだから。


「……あのクソ野郎のせいだ!」


ばんっと教室に戻るなり自分の机を蹴り上げた。自分の足が痛いけれどそんなの取りあえず今はどうでもいい。

いや、すっごい痛いんですけれども……。

あーもうこれも新庄のせい! アホ! クズ!


じんじんと痛む足を感じないフリして涙目で自分の鞄を拾い上げて携帯電話を確認する。

今日は泰子と他の友達も一緒にアイスクリームを食べに行く予定だったのに……。

本当ならあのプリントをさっさと先生に渡して帰る予定だったのに。

何通か届いているメールを開くと、『携帯置きっぱなしで戻ってこないから先に行くね』と、『もうアイス食べたからねー』という明るいキラキラとした内容。

着信履歴も泰子が数回。
私のがどんな状況にあったかも知らないで……。

死にかけたって言うのに! 食べたかったのに! なんで携帯持って行かなかったんだろう私! 残り1枚のプリントなんて放ったらかして帰ればよかった!

ああ、もうむしゃくしゃする。

新庄にはなにされるかわかったもんじゃないし、自分のこの腹の立つ性格にもうんざりだし。アイスでも食べなきゃやってらんない。

ひとりで食べに行ってやる!


「よ、遅かったな」


気合を入れてくるっと振り返ったときだった。

金輪際、私が今後生きている限り、一秒たりとも見たくない顔が教室の扉を塞いでいた。