狂愛ゴング



公園からバス停までの道のりもわからない上に、こんな格好でバスにのるわけにも行かず、歩いて学校にたどり着くと、時間は既にお昼だった。


「す、澄?」


今だ乾かない制服のまま、人目も気にせずに廊下を歩く。

ちょうどお昼休み。授業中じゃないのはよかったのか悪かったのか。
とりあえず廊下の視線は独り占め状態。

廊下をべったんべったんと歩く私に通りがかりの泰子が驚きの顔をして私の目の前にやってくる。


「……なにその格好……そんなに私に文句言いたかったの?」

「……やっぱり泰子か。奴に電話番号と住所教えたの」


そんな予感はしていたけれど。
文句を言いたいけど正直今はそれどころでもない。


「だってーほんっとに怖かったんだもの! すっごい目! 恐怖! 殺されるかと思った!! あんなに怖いの初めて見た……」


思い出すだけで怖いのか、泰子は少し半泣きで言う。


「まーいいや。今話あるのは新庄だから」


泰子に対する文句は後で。今はおそらく来てるだろう新庄を見つけ出す方が先だ。


「やっぱり新庄くんにされたの、それ」


奴以外にこんなことする非常識な人間はいないよ。
そんな奴が地球上にふたりもいたら、人類滅亡してしまう。

自分のクラスを通りすぎて。まっすぐに新庄のクラスを目指して歩いた。

奴は学校に戻って来ているはずだ。

ひとりが大好きなように見せかけて、誰にも流されないようなふりをして、寂しがりな奴は学校に来て誰かと話をしているに決まってる。

来てなかったら家を聞き出せばいい。

途中で奴を探せばいい。
どんなことでも見つけ出してやる。

澄様をなめるなよ!