——『お前が自分の気持ちも認められねえような奴だとは思わなかった』
なに、あの台詞。
認めたら、どうしたっていうのよ。
あんただって、私が新庄のことを嫌っている方が都合がいいんでしょ? だから、興味があるし楽しいんでしょ。
嫌いだって言われた方が嬉しいんじゃないの? 別に喜ばしたくて言ったわけでもないけど!
——『弱虫には用はねーんだよ』
弱虫ってなによ!
好きだって決めつけないでよ! 好きだけどー! ああもう悔しいっ!
認めないことが逃げだなんて! なんてそんなことを新庄本人に言われなくちゃいけないの!
好きって言ったら……どうせ離れていく癖に。離れたいと思う癖に。怒ることさえしないくせに。もしも…………言えば、あんたはどうしたのよ。
「なんで……いつも以上に怒るの」
悔しい悔しい悔しい。
あんなふうに怒らなくてもいいじゃない。
それこそ……興味がなくなった目をしなくてもいいじゃない。
冷たい新庄の視線を思い出すだけで、水に濡れた自分の体がなお一層冷えていくのを感じた。
「なんでいつもと同じことを言っていつも以上に怒るのよばかじゃないの」
なんで?
ねえ、なんでだ。
ぽたりと、前髪の水が地に落ちて、私は新庄のいた場所を見つめた。
言わなかった私に怒った……ってこと? え? どういうこと。
……もしかして、言わせたかったってこと?
好きだと、そう言って欲しかったってこと?
言わなかったから……それが逃げだと思ったから、怒ったってこと、なのかな。
もしかして……私に言って欲しかったの? 私に好かれていると自信があるのはちょっとむかつくけど、まあ事実だから今はそれについては置いておこう。



