狂愛ゴング


「お前が自分の気持ちも認められねえような奴だとは思わなかった」


キュッと蛇口をひねる音が聞こえて水が止むと、ずぶ濡れの私を置いて、新庄はそのまま……踵を返す。

今、なんて言った?
っていうかなに勝手に帰ろうとしてんだよこいつ!


「ちょ……新庄……!」


けほっと咳をして、新庄の背中に呼びかけると、新庄は振り返っていやそうな顔で私を見る。


「弱虫には用はねーんだよ」

「…………」


なに、それ。
新庄の冷たい声が、公園の中に響き渡る。

それだけを告げて、そして私に興味が無くなったかのような冷めた視線を送ってきて、また、背を向けた。


なんで……なんでこんなことされないといけないの……?
なんであんなこと言われないといけないの?

ぼたぼたと水が頭から地にかけて落ちていく。

ああ、もうまた制服クリーニングに出さなきゃいけないじゃないか。お母さんに怒られるのに。新庄と関わるようになってから、何度制服を汚されたか。

制服は思う存分水を吸って、私の身体をずしりと重たくさせる。


「なんで……」


なんで、こんなことまでされなきゃいけないわけ!? ねえなんで? 神様教えてよ!

私そんなに悪いことしてきた?
そんなに悪いことしてきたとも思えないんですけど!

っていうか新庄頭おかしいんじゃないの!? あんな奴が生きててもいいんですか!? ねえ! 私よりあいつのほうが罪深いでしょ絶対!


なんで水までぶっかけられなきゃいけないのよ……!!

なんであんなに……怒られないとならないの?