狂愛ゴング


顔を隠しながらくっくっくと笑いを堪えることが出来ないように笑う。なにがそんなに面白いんだよ。土下座しろ。笑う前に土下座しろよ。

今だ声を出して笑う新庄が笑いながら顔を上げる。


「……——っ…」


その顔は、今まで見た中で一番、怖いと思った。

真っ直ぐに見る新庄の瞳が私を氷りつかすように。
なんの感情も感じないような、鋭い視線に、体が一瞬にしてこわばった。

笑っていたはずなのに。なんでそんな目をしてるのよ。


「お前……面白いなやっぱり」

「……どーも」


面白いなんて思ってない顔して、なに言ってんだこいつ。
どうみたってめちゃくちゃ怒ってるじゃない。

負けないように睨んだまま、新庄を見つめる私に、新庄はにこりと笑った。

嘘の作り笑いだ。
だけど、いつものようなうさんくさい笑顔じゃなくて……。なんというか。顔だけで笑っているような、感じ。

なにを考えているのか、さっぱりわからない。


「でも」


そう言って、笑顔を、やめた。


「ムカツク」


その言葉と同時に私に向けられたのは……水。


「……っわっぷ!!」


水!? なんで!?
私の顔をめがけて襲ってくる水。水!?

手で顔を覆いながら新庄の手元をちらっと見ると、蛇口を手で押さえて私をめがけている。
突然のことに、どうしていいのかわからないまま、水を避けるように顔だけを動かすけれど、容赦なく襲ってくる。

がぼがぼっと口の中に入ってきて、い、息苦しい!


「ちょ……なんなの!?」


なんで水かけられないといけないわけ!?