「惚れるなって言ったのに……俺に惚れたの?」
なにも言えない私に新庄はくすっと笑う。その笑いはいつもの笑い。なに一つ変わらない笑い。
優しい笑顔でもしてみてくれたらいいのに……そんなの空からお金が振ってくるくらいにはあり得ないか。
そのなんでもお見通し、その顔がむっかつく。クソが。
「冗談じゃないわよ……」
好きだと、私が言うとでも思ってるの? 馬鹿じゃないの? そんな素直な性格だったら今まで苦労してないわよ!
言うかそんな言葉! 言わねえよ! 言ってたまるか!
「好きだったらなに? 俺様のことを好きな女には興味ないからサヨウナラーとでも言いたいわけ?」
させるかそんな悔しいこと!
そんな理由で終わってたまるか!
終わらせるなら自分の手で、私が勝って終わらせてやる!!
「……はあ?」
「冗談じゃない! 好きなわけないし! それともなに? 私があんたを好きだから別れましたーっていう理由でも欲しいわけ? 別れたいの?」
私の言葉に意味が分からない顔になった新庄も、すぐに、にやりと笑う。
畜生!
「別れたいなら、別れて下さい。俺が悪かったです——……ってちゃんと謝ってよね」
あんたの思い通りになるなんてまっぴらごめんよ!
どんっと脚を肩幅以上に広げて腕を組んで新庄に対抗できるように出来るだけ大きく見せる。
まあ勝てるはずはないけれど。
土下座でもしなさいよ。
そしたら、しかたないから、別れてあげる。
なにもかも、思い通りになるなんて冗談じゃないんだから。
「ぶっは!」
ふん! と鼻息荒く見る私に、新庄が吹き出して笑った。
なにが面白いの! こっちは真面目なんだよ! クソ野郎!



