狂愛ゴング


学校に向かいたいのに、どっちに学校があるのかも分からないままひたすら走る。取りあえず逃げる。

私の思考今スゴイ単純。動物並!


目の前に公園が見えてここなら逃げ回れるかもしれないと思った。

と、思ったけれど。
さすがにもう何十分の間走っているのか分からない程走って限界。ずっと全力疾走だし。

脚がもつれ始めた瞬間に一気に背後に引き寄せられる力を感じる。


「ってめ……」

「わ、あ、あ!」


怒りに怒ってる新庄の顔が一瞬私の視界に入って、そのままぐらりと後ろに傾いていく私の体。


「ったあ!」


どしゃっと言う音と同時に体に痛みを感じて無意識に声を上げた。


「くっそが」


なんであんたまでこけてんのよ。
声がする方を見ると、私と反対で前から転けた新庄が舌打ちしながら起き上がる。


「……そこ……そこまでして……殴りたい……の」


もうこうなってしまったらどうでもいい。もう今から走り始める体力なんか私には残ってないわよ。

どうにでもするがいいわ!!


私の言葉に新庄は、じろっと睨みそのままひとり立ち上がって服を払う。

期待はしてないけどさ、ちょっと「大丈夫か?」くらいは言ってもいいんじゃないの?

本当に自分が一番好きだな。
あれか。これがナルシストってやつか。今更だけど。


私の方を見ようともせずにそのまま水飲み場に向かう新庄を見ながら私もまだ乱れる息のままゆっくりと体を起こした。

スカートが泥だらけじゃないか。

ふらふらの足取りで新庄の後を追うように歩く。新庄から逃げ出したいのは山々だけど今は私も水が飲みたい。