狂愛ゴング



「どうしたの? 元気になったの?」


急いで着替えて階段を駆け下りると、お昼のワイドショーを見ながらお母さんが振り向いた。


「あーうん、学校行くわ」


お腹は空いたけれど、ゆっくりご飯を食べる時間も惜しくてそのまま走って玄関に向かう。

お母さん、私は戦場に行きます。
帰ってくるから……待っててね……。


「よう」


悪夢。今見てるの悪夢なんじゃないだろうか。じゃないと困る。

玄関を開けて私の目に飛び込んできた物は……向かいの家の塀にもたれ掛かる新庄の姿。

ぎゃああああああ!!!!

ドアがバタン、と閉まったと同時に無意識に走り始める私の体。

これが! コレが防衛本能!


っていうかなんでいるの!!!
さっき電話で話したばかりじゃないか! あいつ家の前からかけてたのか! 家を知らないと思っていたっていうのに……なんてやつだ。


必死で走りながらちらっと後ろの様子を見ると……。


やっぱり追いかけてるうううううう!! ひいいいい!! 殺される! これ間違いなくやられる!

おかあさーんおかあさーん! おとうさーん!


「まて、ゴラァァ」


ごらあとか言ってるよううう!!

もう負けたくないとか逃げたくないとかそんな次元じゃない。
これ捕まったら間違いなく死ぬ系だと思う! やだあー! だまだいやだ! まだまだやりたいことあるんだから!

まだ花の高校生だっていうのに。
アイスクリーム食べたいし、漫画も読みたいしごろごろして過ごしたいんですけど!