「おい」
ぐいっと顔を捕まれて、笑いながら私の顔を見ようとする新庄に抵抗しようと力を入れるも……そんなの無理で。
「なにその顔」
うるさいな。
うるさい。
なにも話すな。声を発するな。
「……っはな、して!」
ばっと手を振り払って新庄に顔が見えないようにすることしかできなかった。
新庄の顔を見るのが怖い、というのもきっと理由に含まれる。私の顔はきっと……見なくても分かる。分かってる。なによりも正直な顔。
きっと——……赤い。
自分で馬鹿だと思うことしかできない。赤くなんてなりたくないのに止められない。それが悔しくて涙まで溢れそうだ。
そんなの絶対いやなのに。
新庄はなにも言わず、私もなにも言わない。
きっと互いになにも言えなかったんだろうと思う。
「お前……」
どのくらいの時間が経ったのか、新庄がいつも通りの声で、私に声を掛ける。
びくりと体が跳ね上がり、おそるおそる新庄を見た。
私の顔を見て、新庄はまた口を閉じて、少し考え込むような顔をする。
言えばいいじゃない。もう終わりにしようと言えばいい。
私から謝って別れる訳じゃない。新庄が言い出す。それなら満足だ。そう、付き合ったきっかけは、そんな意地だったんだから。新庄から別れを口にすれば私の勝ちだ。
やけっぱちにもにた感情だけど、その方が幾分マシだ。
今のままよりも。
「セックスするか」
「——は?」
いや、いや……なんでですかね?
さすがの私も予想だにしなかった新庄の言葉に目を見開いた。



