狂愛ゴング


「そう言えば、最近新庄が優しいって話題になってたけど」

「いつでも優しいけどな」


どの口が言うんだか。どこか優しいの? 是非ご本人の口から聞きたいわね。
今日の告白は私へのいやがらせだということで納得は出来るけど。


「ああ、でも、まー……他の女にわざわざストレス発散することもなくなったか」

「そもそもストレス発散に女の子を使おうってことが間違ってると思うけど」


そんなにストレスたまるほどの生活なんてしてないでしょうに。
ストレスレスだろどう考えても、どこでストレスを感じるんだよ。私のストレスと対決させたら私の圧勝だからな!


「お前がいるから充分かな」


——ほらまた。

分かってて言ってるんだ。
私がなにも言えなくなるのに、わかってて、そんなことを言う。

振り返らない新庄に少しほっとしながらも唇を固く固く噛んだ。

なにがしたいの。私にどうして欲しいの。なんで一緒にいるの。

そんなの……聞かなくたってわかってる。遊びたいだけ。そこにそれ以上の気持ちなんかないってことも分かってる。


「お前の反応おもしろいしな」


そう言って振り返ろうとする新庄に私の顔が見えないように、思わず顔を地に向ける。


「あっそ」


そう、素っ気ない返事をするのが精一杯だった。出来るだけなにも思ってないように。

分かっていたことだ。自分で何度もそう言い聞かせていること。

なのに……新庄の口から改めて聞かされると……どうしても心が重くなる。


「なに落ち込んでんの? 今更。馬鹿か?」


落ち込んでいるわけじゃない。
だけど……違うとはっきり言えない。