狂愛ゴング


だけど新庄は……私の言葉にすぐに言葉を返すことなく、振り返ってじっと私を見つめた。

……なんで、すか?

いつもなら……すぐさま鉄拳か言葉の暴力が飛んでくるのに。
じっと見つめ合ったままでいると、次第に心拍数が上がってくる。

冷や汗が流れるほどに凍り付いたこの空間が息苦しい。


なに? ……ほんとに……嫉妬……とか? え? ま、さか。まさかーねー……。


新庄はやっと息をしたのかと思う程にふっと力を抜いたような表情になって笑った。



「死ぬか?」


いえ……。
死にたくないです……殺さないでください。




「で、なにかさせられるわけ?」


取りあえず歩く新庄に、どこに向かっているのか分からずに声を掛けた。

怒ってるくらいだしなにか仕返し考えてるんじゃないの?


「は?」


は? じゃねえよ。なにがしたいんだお前は。
頼むから会話くらいはまともにしてくれませんかね。


「仕返ししたいから今日連れ出したんじゃないの?」

「ああ、別に。お前に仕返しするのなんか簡単だしわざわざそんなことに俺の脳みそ使うかよ」


ああ、そうですか。
なにがしたいんだかわかんない男だなホントに。あんたの脳みそなんてそんなことでしか機能しないくせに。

話しかけると、会話にならない。もしくは暴言が飛んでくる。

けれどご機嫌斜めな魔神様は、いつもよりも無口で、話しかけない限り私に話しかけてこない。

無言でいるのは精神が安定するけれど、なんだか居心地が悪くて取りあえず話題を振った。