狂愛ゴング


——にしても……。


「いつもに増して機嫌悪いんじゃないの?」


隣にやっと追いついたときに、思わず言葉にしてしまった。時既に遅しってこういうことかと思わせる表情で振り返る新庄に、思わず目をそらす。


「あ?」

「ナンデモナイデス」


聞かなきゃよかった。
洒落にならないほど機嫌悪いじゃねえか。いつもの数倍オーラが黒いぞ。


「お前が人にオレンジジュースぶっかけてトンずらして、自分は教室できゃっきゃっ笑ってるのがそんなに気に入らないのかって?」


そんなことまで言ってないです。


「気にいらねえな!」


ですよねー。


「そんなに……怒らなくてもいいじゃない。いや、悪いのは悪いけど、そんなのいつもお互い様でしょうが……」

「俺はいいけどお前にされるのはむかつく」


私もだよ。
なに言ってるの? お前神様ですか?


「しっつこいなあ……お昼のいやがらせで満足すればいいのに」


呆れて呆れてこれ以外の言葉なんか出てこない。
コレが地雷になることは分かっているけどソレでも言わずにいられない。


「お前カスだな」

「あんたに言われたくないわよ!」


真顔で言われる言葉に私が驚きよ! 新庄にカスって言われるなんて! 信じられない。


「それともなに? 本当に嫉妬でもしてるんじゃないの?」


出来るだけいっぱいいっぱいの嫌味を込めて勝ち誇った様に笑う。

むかついてイライラしやがれ。