「——なに、話してんの?」
「ぎゃ!」
どすっと頭に乗っかかる重力を感じてそのまま机にへばりつくように落ちる私の体。
こんなことするのは……この世にひとりしかいない。
「楽しそうじゃねえか。俺の悪口?」
クソ馬鹿カス新庄。
重たいよどけろ。
けれど重みで顔が机にべっとりとくっついて口も動かない。
重さと苦しさにばしばしと机の上を何度も叩いて暴れる私に、新庄は「あーわり。見えなかった」と白々しく謝って体を起こした。
なーにが悪いだ。
思ってもないことを。
「お前の悪口悪口。お前の悪口が一番盛り上がる話題だからな」
新庄の登場に驚くこともなく笑う彼を私は尊敬したい。
「うっせーよ、あることないこと言いふらすぞお前」
「なんだよー機嫌悪いじゃねえか、なに? 嫉妬?」
冗談じゃない。
冗談にも程がある。
心底いやそうな顔を多分、私と新庄は同時にしたんだろう。
ソレを見てまた笑いながら「まー仲よくなー」と手を振ってそのまま背を向けた。
冗談だとしても笑えないっての! もっと腹が捩れるような冗談を言え!
「おい、帰るぞ」
呆れたように彼の姿を見る私に、傍の新庄が言葉を発する。
「——は?」
なんで……?
振り返った先にいる新庄は相も変わらず偉そうにふんぞり返ってる。
いやいやいや。
「まだ……SHR終わってないんですけど?」
終わる前になにクラスにやってきて、なに普通に帰ろうとか言ってるの? 馬鹿ですか? アホですか?



