狂愛ゴング


ただそれと新庄は一緒にしてはいけない。
あれはただの鬼畜だ。人間のクズだ。

口にしたら多分怒られるからさすがに黙って彼女の言葉を待った。


「でも、付き合ったら本当に最低で……本当にびっくりするほど優しくないし……困らせることばっかりで、何度も悔しくて泣くばっかりで……」


うん、そうだよね。多分そうだよね。
ウワサ通りだったんだろうね……。

ああ、やっぱりあいつ誰に対してもあんな感じだったのか。わかるよ、辛かったよね、ムカつくよね、殴りたいよね。うん、わかる。すごーくよくわかる。

交換日記してその気持ちを共有したいくらいわかる。


「——でも、好きになっちゃったんだもの」

「え? どこで?」


さっきの話にどこに好きになる要素が!?

思わず口にすると、彼女は黙って私を睨み付けた。

だってーわからないじゃんよー! いいとこ今言った? なにもなかったよ!? 無かったよね!? 私が思ったこと“ああ新庄は正真正銘のクズだったんだなあ”ってことくらいよ!


「そういわれるからイヤなのよー!!!」

「あ、え、えと、いや、まあ、好みって色々あるしね」


なんで私が彼女を慰めないといけないのだろう。

わーん! という背後に文字が浮かび上がりそうに顔を隠しながら叫ぶ彼女におろおろしながら声を掛ける。


「だってみんな言うんだもの! あんな男好きになるのはみんな馬鹿だって! 私だってそう思ってたもの……なのになんかわかんないけど好きになっちゃったんだもの! でもそんなこと言ったら友達に馬鹿だって言われるじゃない!」


ああ、まあそうですよね……。


「あの、いじめた後の顔が好きだったのよ! いじめられたって付き合ってくれているのが嬉しかったのよ!」


うわー。かわいそうに……。
いや、失礼極まりないのは分かっているけれど……。