狂愛ゴング


ああ、だから。

この前私が言った言葉に、泣いたのか。
本当に新庄が好きだったなら……私が言った言葉に涙を流すのも納得が出来る。


——『新庄みたいな最悪の人間でも、付き合いたくないって思われたんじゃないの?』


なにも知らない私が言うべきことじゃなかった。

彼女の口先だけで判断して、私は自分で思っていた以上に、彼女を傷つけてしまったんだろう。


「あの、ごめんね」

「謝らないでよ! 惨めになるでしょ!」


そんなこと言われても……。
私も負けず嫌いだけど、この子も相当の負けず嫌いだと思うわー。


「でもさー、なんであんなこと言ったの?」


そうそう、そもそもあんなふうに新庄のことを言わなければいいのに。
なんでそんなに隠すんだろう。

仮にも付き合っていたわけで。仮にも告白したわけで。あそこまで新庄のことを馬鹿にするのって不思議なんだけどな。

別れた後に引き留めに来たんだから、やっぱり相当好きだったんだろう。そういえばいいのに。

私も単細胞だから、あの時は新庄のことを好きじゃなくて見かけだけなんだと、彼女の言葉をそのまま鵜呑みにしたけれど。そこは反省して今後の人生に活かすとしよう。


「……だって、あんな男本気で……なんて。イヤなんだもの」

「いや、告白したのは自分でしょ」

「あいつに告白したのは確かに顔だけだったのよ! クソ曲がった性格だって、実は付き合ったらちがうんじゃないかとか!」


そんな少女漫画的な展開、新庄に期待するのもどうかと思う。

付き合って私だけに惚れ込んで私だけには優しいの、なーんて。あるわけないじゃん。

そんなこと出来る男は、多分泣かすほど女をいじめないだろ……。あれは心底鬼畜だ。

いや、まあ期待する気持ちも分からないではないけれど。私も少女漫画好きだし。逆ハーとか憧れますし、俺様とか大好きだよ。