狂愛ゴング


新庄の視線から逃げることなく、必死に強がって睨みつける。

すると新庄は、ふっと、バカにしたように笑って……。



「……ブスが」



——……ぐさっとくる。さすがに。

軽蔑したような目でそんな言葉を吐き出されると、さすがに私も傷つくんですけど。


「ブスですいませんね……」


ぴくぴくっと顔をひきつらせて口にしたのは、精一杯の強がりだ。

ちくしょう! 私にケンカの才能があれば今すぐこいつを殴るのに。泣きわめいて謝罪するまで殴るのに。

私の返事に新庄はすっくと立ち上がり、私の頭上からプリントを手放した。

ひらりひらりとそれが舞い、丁度私の目の前に落ちる。

と、同時にでっかい脚が勢いよく地面を踏みつけた。
プリントの、上から。


「……え?」


えーっと、なにが起こったんだろうか。

靴の下に踏み潰されているプリント。私が、集めていたもの。この1枚のために私は聞きたくもない男女の痴話げんかを聞かされ、時間を潰され、あろうことか新庄と口をきく羽目になってしまった。

そんな、真っ白のプリント。

呆然とそれを見続けていると、新庄は追い打ちをかけるように靴を地面にこすりつける。もちろんプリントの上から。

ぐりぐりぐり、という擬音語が、多分とってもお似合い。


「調子のんなよ、お前」


いや、いやいやいや。どう考えても調子のってるのはお前だろ。
っていうか、プリント……。

どんどんぐちゃぐちゃになって土にまみれていくそれを見ていると、ふつふつと怒りが込み上がる。笑ってしまいそうだ。


「おい、下衆。足どけろ」

「あ?」


あ? じゃねえよ。日本語もまともに喋られないのか豚野郎。
勢いよく立ち上がって、新庄の体をどん、と突き飛ばした。