「あんた、本当に……なんで誘ったわけ?」
「いやがらせ」
ほんと、クズだな。もうクズって言葉すら言い慣れてもっとなんかえげつないあだ名付けてやりたい。
怒りに震える私を置いて、新庄はそのまま歩いて行く。
むしろこんないやがらせの為に、ここまで動けるあの男がすごいよね。もっとその気持ちを別に使えばいいのに……。慈善事業とかしろよ。もうちょっと世のため人のためになることをだな……。
っていうか1回お寺にでも行って、心を洗い流してこい。
絶対昨日の仕返しだ……。このままだと一緒に帰ったらなにされるか分からない……。動物園にでも連れて行かれて飢えたライオンの檻にでもぶち込まれるかも知れない。
あいつならやりかねない……!!
はああーっと深いため息を零して、渋々ひとりでお弁当を食べた。なんかもう、考えるのも疲れてきた……どうにでもして。まな板の上の鯉でいいよ私。
あの男に……もしかして、なんて気のせいに違いない。
こんなにも地味ないやがらせを受けているのに、なにがどうしてこうなるんだ私。狂ってるな。そんな思考をすること自体狂ってる。
そう、昨日泣いたのも悔しいだけ。
思いが爆発して泣いただけだ。あんな男に馬鹿みたいないやがらせをされたから。
よし、もうこのネタ終了。
「——ねえ」
ねえ? 本当に、ねえ……って?
急に聞こえた声に、すぐさま反応が出来ず、一瞬思考を止めてから、顔を上げた。
「あ、みち、えさん」
「……ちょっと話いい?」
目の前に私に影を作って立つ彼女に、私はアホみたいな顔を向ける。
……マジでこの人もストーカーですか?
このまま殺されたりしたらどうしよう!
冷たい表情の彼女が余計に怖いんですが。怒りすら感じないほど冷たい顔ってなによりもこわいんですね! そして私には話すことなどございません!



