狂愛ゴング


「さっさと行った方がいいんじゃないー? あと5分で澄の顔が机とくっつくと思うなあ」

「そんなこと想像しないで!」


ちくしょう!

カバンの中から乱暴にお弁当を取りだして、がに股で新庄の元に近づく。
びびってなんかやらないからな!


「きったねえ歩き方。最悪だな」

「そんな女が彼女ですいませんね、イヤなら別れてあげなくもないけど?」

「お前、昨日ジュースぶっかけたくせによくもまあそんな態度が出来るよな」


ひー。

忘れてたのに! 忘れたふり出来ていたのに! 忘れることで今日を過ごそうと思っていたのに!

心の狭い男なんてろくでもない。
生まれ変わっても前世の記憶を残して人を追い詰めそうだ。


「あ、あの!」


かわいらしい声が背中から聞こえてきて、ふたりして振り返る。

廊下にいた人みんなが彼女を見ただろう。


顔をまっ赤に染めた女の子が、私たちを見つめていた。
見るからに必死だと分かる程、体中に力を込めている。

……と、なると。

呼びかけた相手は私ではなく新庄だろう。 ちらっと新庄を見ると、なにを思っているのか分からない顔をして、彼女を見つめていた。


「こ、これ、読んで、ください」


新庄に差し出されたラブレター。今でもラブレター書く女の子いるんだなーというのはさておき。

昨日といい今日といい。

仮にも“彼女”という存在がいるのを知っていて告白してくるってのはすごい。
相手が私って言うのもあるだろうし、どういう経緯で付き合っているのかも知っているのだろうけれど。

それでも、私と一緒の時に告白してくると言うのは、私に対する挑戦状でしょうか。

イヤ確かにあなたもかわいらしいですけど。