狂愛ゴング


「たいそう人気者じゃん、ウワサ聞いたよ」


あんたのウワサに比べたらかわいいもんだ。

ニヤニヤしながら言葉を発する新庄を見ていると、いら立ちが募って黙っているのが精一杯だった。


「盗み聞きするいい趣味持ってるのは知らなかったけど」


あ、マジで屑だこいつ。
誰かれ構わず自分が楽しむためならなんでもやるようなやつだ。

この鬼畜が。飢えた獣かお前は。


「女の子泣かすのが趣味っていうクズには負けると思うけど」


私は自分の性格を、イヤってほど知っている。
だからこそ、この男には関わりたくなかったんだ。

負けず嫌いで短気で、考えるより先に口が動いてその次に体が動く単細胞な自分。

猪突猛進、という言葉が多分私の性格を1番的確に表しているだろう。

学校でそれなりに名が知られていることもわかってるさ。
理由だってちゃーんと理解してる。


でも……さすがに我慢の限界だ。

舌打ち混じりに嫌味を口にすると、新庄は目を丸くして私を見つめた。


ただ、自分の性格にもう一つ説明を付け加えるなら、“ヘタレ”でもあることを知っている。

別に負けず嫌いだからって、怖いと思う気持ちがないわけじゃない。
むしろビビリだよ私は!

平気なふりをしつつも、言っちゃった! っていう後悔と、なにをされるんだ! という恐怖でいっぱいだ。


でもまあ……新庄はどんなに泣かせた話を聞いても、手を上げたことがないのは知っているから大丈夫かな。後で泣いて謝ればいいだろ。


泣いて謝ることは出来る性格かどうかは……わからないけれど。


どっちにしても、言われっぱなしはごめんだ。
女がみんなお前に惚れてなんでもゆるすと思うなよ?