「……かわいそうだな、あの子」


「ああ。……だからアイツを救ってやりたいんだ」


「…………」


「俺が初めてアイツに逢った時、アイツは泣いてた」


「……え?」


「ずっと声を押し殺して泣いてた」


「…………」


「俺がアイツに話し掛けた時、アイツ俺になんて言ったと思う?」


「……さぁ」


「アイツは俺に言った。……笹川麻衣になんて名前、なりたくなかったって」


「……え?」


「あの人は母親なんかじゃない。あの人はサイテーな母親だって」


「……あの子は、そんなこと」


「アイツは母親のことを"母親"なんて思ってないんだよ」