だからその時はお母さんを嫌いだなんて言えなかった。
いまだってそうだよ。
あたしはお母さんを嫌いなんかじゃないし、お母さんから離れたいなんて思ってない。
たしかに縁を切りたいくらい憎かったけど、それでもあたしたちは"親子"だから……。
「麻衣?どうかした?」
「ううん……なんでもないよ」
「そう?早く朝ごはん食べちゃいなさい」
「……うん、いただきます」
「どう?」
「……おいしいよ」
「そう?よかったわ」
―――――何年かぶりに食べたお母さんの手料理は、今まで食べた料理の中で一番おいしかった。



