「……そうだったの。いい人を見つけたわね」


「うん……先輩には迷惑ばっかりかけてるけど、それでもそばに居てくれるの」


「そう。よかったわね」


「……うん」




笹川の母親は俺に視線を向けると、"これからも麻衣のことよろしくね"と一言言った。


そして笹川は涙を拭うと、最後に"お母さんありがとう"と呟いた。




「行こう、先輩」


「……ああ」




会社を出る頃にはすっかり涙は渇いていて、笹川の表情も少しだけだけど明るくなっていたような気がした。


それはきっと母親とちゃんと向き合った結果なんじゃないかって思う。