「捨てられたあの日から、両親の顔なんか覚えてないけど、その時だけは"生まれてきてよかったなぁ"って思ったんだ」
あたしはずっと先生の言葉に耳を傾けていた。
「だからお前も、いまは母親のことをそんなふうに思ってても、いつかは感謝する日がくるさ。……親孝行はできるうちにしといてやらないと、あとになって後悔するのはお前だぞ」
先生はそれだけ言って教室から出て行った。
「……感謝、か」
あたしはずっと先生の言葉を考えていた。
"親孝行はできるうちにしといてやらないと、あとになって後悔するのはお前だぞ"
……先生はどんな気持ちで、あんなこと言ったんだろう。



