「……そうだな」


俺には笹川がいまどんなことを考えているのかわからなかった。




「……麻衣にはもう傷ついてほしくないな、あたし」


「……そうだな」


「麻衣がこれ以上傷つくことを考えると……なんだかかわいそうだな」


「…………」


「……あたし、花瓶の水取り替えてきます」


「……ああ」




花瓶を持って病室を出ていく笹川の友達。


でもその背中はとても切なくて悲しげだった。




そしてその時―――…


"コンコンッ"と扉の叩く音がした。




「……はい。どうぞ」