不覚にも言葉に詰まってしまった。

でも、このまま黙っていたら本気にしたと思われる。


「……生憎だけど、そういう冗談は好きじゃないの」

精いっぱい平静を装って返したのに、またすぐにこんなことを言ってくる。

「ジョーダンじゃないって言ったら?」


油絵の具の匂いに満ちた部屋が、静まりかえった。


……からかわないでよね?

そういうことを言って、相手の反応を楽しんでる。
きっとそう。そういう奴なんだ。


「好きなんだ、って言ったら描かせてくれる?」


悪びれた様子もなく繰り返した隼太。また少年の瞳で、じっとこっちを見てくる。

もう、まったく。
こういう態度、毎回止めてくれないかな?