ナル君はあたしのうんちくを嫌がりもせず

一生懸命理解しようと頑張ってくれた。

「七夕の日の夜に会えるというのも何だか

ロマンのあるお話ですね。」

よくある七夕伝説はこういう話だよね。

織姫は天帝の娘で、機織の上手な働き者の娘であった。

牛飼いである彦星もまた働き者であり、天帝は二人の

結婚を認めた。二人はめでたく夫婦となったが、

夫婦生活が楽しく、織姫は機を織らなくなり、

彦星は牛を追わなくなった。このため天帝は怒り、

二人を天の川を隔てて引き離したが、年に一度、

7月7日だけ会うことを許された。

自業自得と言えばそれまでだが、結婚して仲良く

暮らしている2人を引き離す鬼のような天帝の気持ち

を考えると遊んでばかりいる2人を叱ったわけで、

娘に罰を与えた父の気持ちとしたら悲しいものがある。

「ヒヨリンはそういう話信じる?」

そうだな。

伝説と言われる類のものは興味がそそられるわ。

信じると言ったらサンタさんは居ると思うし、

宇宙人も密かに居るのではと思ってる。

「ナル君は?」

ナル君はにんまりしながら可愛い笑顔を見せて、

「信じてるよっ!!」

純粋で無垢な笑顔を眩しくも繰り出してきた。

あの7人の中で唯一そういう類を信じる仲間

であるのはナル君しか居ないと思った。

慶詩や伊織君は絶対に馬鹿にする。

ちぃー君は絶対に興味なさそう。

短冊だって適当にケーキの家に住みたい

とか書いたに違いないわ。

馨君は何を考えてるか基本分からないミステリー

ナイトだから分からないけど大人だから

ある程度の世間を知ってるのかもしれない。

京様は無言で願い事は意外としっかり

書いてるかもしれないけど、キランと

した眼差しでそんな話あるわけないだろって

精神的に追い詰めてきそう。

ユウヤはただの祭り男だろう。

七夕ってよりも祭りに現を抜かすと言った

ところだと思う。