「苦労だなんて思ったことはない。
それがあたしの幸せでもあった。
いつかあたしもお味噌汁を毎日
作ってあげなきゃならない人が現れたら
父さんは発狂するとか言ってたけどね。」
みんなに可哀想な子だと思われたくはない。
たくさんの人が同情してくれてるみたいだけど、
あたしはちっとも自分が可哀想だなんて思ってない。
「最初は絆創膏だらけの指で父さんに泣かれた。」
自分の怪我じゃないのに父さん泣くんだもん。
「大変だったんだね。」
「それだから、毎朝お味噌汁は必ず作る。
規則正しいというよりかはもう癖になってる
のかもしれない。」
最近、よく昔を思い出すような・・・
でも、ある一定の頃は全く思い出せない。
母さんがまだ一緒に暮らしていた頃。
どんな日常が繰り広げられてどんな思い出が
あったのか全然覚えてない。
「因みに一番好きな具は油揚げに大根だ。」
豆腐とわかめは王道だけどね。
ジャガイモと玉ねぎも美味しいんだよ。
「日和ちゃんの?」
「うん、あたしが好きな具です!」
商店街を出ると夕日に染まる辺りが
やけに鮮明だった。
「後ね、そうめん味噌汁ってのも美味しいよ。」
これ、意外と美味しいのです。
マミーが教えてくれてたまにやっちゃう。
風邪引いた時とか喉につるんとして、
温かいお味噌汁で体も温まるのである。
「へ、へぇ」
「確か、兄ちゃんがすごく好きだった。」
あの奇天烈兄ちゃんも父さんに似て味噌汁
が大好きなのである。
日本を離れるときには味噌汁と言いながら
泣く泣く出たっけ?
「おめぇーの家族はどうなってんだ?」
慶詩、それはあたしが一番知りたい謎だ。
真面な人が居ないと言うのが家の自慢かも
しれない。
※自慢にならないとだろう。

