前に母さんが言ってた気がする。

『日和、女は男に追われる生き物よ!

追うより追われる女になってやるのよ。』

今の状況が正解なのかは問えない。

母さん、追われるって結構辛いです。

いっそのこと、追わないでくれと叫びたい。

もう下駄の鼻緒が千切れそうです。

何で、こんな時に限って下駄で来ちゃったの!?

「ひよっち、あのささっきから気になってた

んだけど、何で下駄?」

あたしはとても後悔している。

下駄で来てカッコイイとか浮かれたさっきの

自分を殴ってやりたいよ。

「風流を感じたくて。」

「ひよっちって変わってるよね。」

クルミちゃん、呑気に話してる場合じゃないわ。

男の足の速さをナメちゃマズイのよ。

そして、こんな時に限ってケータイも

持ってないし!!

人に迷惑かけるわけにはいかないにしろ、

せめて田中を呼び出してヘルプミーとか

サユに報告するのだからマコ君にもどうせ

伝わってしまうのならあの2人に落ちから

借りたいと思ったのだがない。

「待てコラッー!!」

ぎゃああ、恐ろしい形相よ。

あれは鬼さんじゃないか。

これはデス鬼ごっこ!?

リアルすぎて笑えない。

捕まると死刑なのか!!

それは必死に逃げねば何とかして

鬼さんから逃げ延びないとね。

頭から角でも生えてくるんではないかと

思いながらもひたすら走った。

体力だけはあって良かったと思う。

こう見えて、走るのは得意です。

持久走も短距離も行けます。

クルミちゃんも体力はあるみたいで

男たちに今のところ追いつかれることもなく

一定の距離を保ったままである。