「あれ?パパは?」


「…緊急入院」


「は?マジで?」


「後でおじいちゃん家に行って保証人になってもらわないと…取り敢えず悠の病院行ってくるね。たぶん大丈夫だと思うけど、間に合わなかったらピアノ自分で行ってね」


「はーい。いってらっしゃい」







私は6歳の頃からピアノを習っている。
今年は二年に一度の発表会の年で、曲目は三曲。特にクラシックの曲が難しくて、テスト期間に全く練習出来なかった分、夏休みに入って急ピッチで練習した。


リビングの赤いソファで寝転がるパパの頭の横で練習してたから、きっと煩かっただろう…

何も言わなかったけど。






「まぁ、腫瘍って言ってたからねぇ…こぶし位って言ってたもんね。そりゃ入院するでしょ」










この時私は、きっと手術をすればそれで大丈夫なんだと、そう思っていた。