闇夜の略奪者 The Best BondS-1

 「シャード!」
 そこには、身支度を整えたシャードが立っていた。
 首の後ろ辺りで長い黒髪を纏めている。それは何かが吹っ切れた、すっきりした印象を与えていた。
 耳にはラピスラズリの一粒ピアス。明るい夜空の色だ。
 「何処に居たの? 居ないかと思ったじゃん!」
 「遅れておきながらよくそのような事が……」
 苦笑しながらも、シャードは遅れたことに対してしっかりと指摘した。やはりというかなんというか、どうやら几帳面な性格らしい。
 「時に剣士殿。傷の方はどうだ。化膿してはおらぬか? それから毒の後遺症は……」
 シャードはまずゼルに目を向け、その視線をエナへと流した。
 「コイツ、次の日にはもうピンピンしてたぜ。どんな治癒力だよ。あ、オレも平気だぜ。そりゃ痛ェけどな」
 「ジストさんの愛の力の賜物だよ? ジストさん、もう超頑張っちゃったもんね」
 「添い寝しよーとして叩き出されただけじゃねェかよ」
 そうだっけ? と嘯(ウソブ)くジストにシャードはほんの少し笑顔をみせた。やはり、とても不器用に。
 「あれ? 荷物は?」
 エナはシャードの腰あたりを見て、そのあとぐるりと周りを回った。
 荷物らしきものが何一つ、見当たらない。
 シャードは苦笑のような自嘲のような、なんとも不可思議な顔をした。
 「そう、私には何も無い。武器も着替えさえも無い。あるのは僅かに残った金のみだ」
 そう言って、シャードは不安そうな表情で三人の顔を見渡した。
 「何も持たぬ男だが……それでも構わぬだろうか」
 三人は顔を見合わせ、同時に頷いた。
 「それが、いいんだよ」
 エナの言葉をゼルが継ぐ。
 「体さえありゃあ、充分だろ」
 「ジストさん的には、別に男に何の期待も無いしー?」
 その言葉への喜びを隠すように、シャードは手を自身の首元へとあてて視線を逸らした。口元に浮かぶ笑みが自分でも恥ずかしいのだろう。
 「ほら」
 エナはシャードに向かって手を差し出した。広げた掌にシャードは困惑の様相を見せ、その手をじっと見つめた。エナは其れを上下に振って見せる。