「お爺さん、それってセクハラですよ」



元気なおじいさんに、呆れたように樹先輩が言う。



するとおじいさんは急に目が覚めたように樹先輩を見上げ、


「そうかそうか、悪かったなぁ」


と笑い、そそくさとこの場を後にしてしまった。



「全く、最近のじぃさんは……」



樹先輩はため息交じりにそう呟き、私の手を握りなおして再び歩き始める。



けれど、私の頭の中ではさっきのおじいさんの言葉がこだましていた。



『これから2人でしっぽり行くのかのぉ~~』



「亜美、どうした?」



「う、ううん。なんでもない」



私はあわててその言葉をかき消し、微笑んだのだった。