「この式場にしよっか」
「うん、いいよ」
「デザートは、ティラミスね?」
「うん、いいよ」
「引き出物、どっちがいい?」
「ユリの好きなほうで、いいよ」
気づけば、式を挙げるにあたって必要な無数の選択のほとんど全てを、百合が決めていた。
最初っから、そう。
選ぶのはいつも、私だった。
そして、あなたの答えは大抵、
「うん、いいよ」
だった。
「ねぇ、わたしと付き合って」
「うん、いいよ」
「タク、大好き」
「うん、僕も」
「結婚しよっか」
「うん、いいよ」
あなたはいつも、穏やかな笑顔でうなずいた。
そんな会話が重なって、わたしたちは今日この日を迎えてる。
だけど。
ねぇ、
・・・あなたは、
本当にそれでいいの?
卓也が優しくうなずけばうなずくほど、百合の不安は高まっていく。
タクの「うん、いいよ」は、本当は、
優しい優しい、嘘なのではないかと。
あなたはホントは・・・
神前式が良かったんじゃないの?
デザートはシャーベットが良かったんじゃないの?
引き出物は、選べるカタログギフトが良かったんじゃないの?
・・・結婚する相手は、別な人が良かったんじゃないの?
「ねぇ、ユリ」
隣の部屋の扉がまた開き、今度は卓也が顔を出した。



