しかし、頭では分っていても心は… あのアキの裸体の呪縛から逃げ出せない自分がいるのも確かだ。


アキがとんでもない不良だと言う事も、一緒にいれば自ずと分った。


それでも不安定な自分の心を支えてくれているような気がする。


大輔のような性格が羨ましい。


剣道にあれほど打ち込み、その練習量に対して結果(実力)も伴っている。


ほどほどの学力があり、誰とでも気さくに話し,友達も多い。


だから何かあれば友人が情報提供もするのだろう。



河村アキの情報も… 


孝輔は自分の事を心配している大輔の事を思うと、嬉しさよりも同じ双子なのに、と言う挫折感の方が強く感じられた。


極端に言えば,人生に対する失望感のようなものがヒシヒシと沸き起こっていた。



そうか、真理ちゃんも… 自分は姉とは違う、と思っていたが、二人とも母に溺愛されていた。


それでも双子の自分は大輔に支えられたところがあり、何となく今まではまともにやって来られた。


しかし姉には心の拠り所が無かった。


同じ孫でも、祖母たちにとって,母の庇護が強かった姉は、お澄ましで高飛車、可愛げが無かったのだろう。


いや、姉の方が祖母たちから離れたところにいたのだ。


自分は大輔のお陰で、すんなりと母の影を断ち切って家族の中に入れた。


しかし、長年母だけを見ていた姉には、母を憎んだり恨んだりしても,居場所が見出せなかったのだろう。