「どうして広志さんが。広志さんはまだ社会人一年生でしょ。
そんな事考えられない。」
「広志さん、ひょっとして真理ちゃんを。」
二人は一度に声を出した。
考えられる事は… 広志は前々から真理子に好意を持っていた。
しかしおとなしいから心に秘めていただけで…
ここに来て父親の無い赤ちゃん共々面倒を見ようとしている。
そうとしか考えられない。
だけど… どう考えても広志のイメージではない。
「いや、俺も、もしそうならば複雑だが安心だ。
しかし広志は、真理子には興味が無さそうだった。赤ん坊だけを望んだ。
自分は事務所務めだから一緒にここで育てる事は可能、だそうだ。
明美さんが手伝ってくれるし、見たければ水木のお母さんも昼間は手をかけたらいい、とか言っていた。 しかし親権は自分が持ちたい、と言ったぞ。
何を考えているのか分らんが数日前に言って来た。」
と、父は笑うに笑えないような不可思議な顔をして二人に伝えている。
普通子供が欲しいのなら、まず結婚して、
それから二人の愛の結晶として子供を作るものだ。
広志なら希望者探しはそれほど難しくないだろう。
まだ高校生だが、二人にだってそんな事は分る。
「子供が欲しかったらまず結婚相手を探してからだろう、と言ってやったが、
あいつ神妙な顔をして、男はどう逆立ちしても子供を産めない。
だけど結婚なんて想定外だから、真理子の赤ちゃんが欲しい、と言っていた。
まあ、真理子の育児放棄が前提としての考えだがな。
あいつも… こんな事は人の前では言えないが、
あいつだけでなく悟や和也もそうだか、
外の顔は近寄り難いような鋭い考えの下に行動し、感心させられてばかりだ。
しかしどうも、ちょっとどこかずれているところがある。
なあ、そう思わないか。」
と、こんな言葉を出す父親も珍しいだろうが、
父も真面目な顔をして二人の息子、まだ高校生の息子に話している。
ついさっきまでは、大輔の深層を思いやり、
気配り溢れる内容に思われていたが、
広志が赤ん坊を欲しがっていると言う話が出て…
微妙に話が浮いてしまったようだ。

