「父さんは野崎組のかしらで、この家の家長なのだから俺のことなど気にしなくてもいいじゃあないか。
俺は父さんの子供だから反対などしないし、出来ないよ。
そんな言い方をされたのでは、何でも俺の責任になってしまう。
俺は… あいつを好きになれない。それだけだよ。」
しばらくして大輔は感情的な言い方をして父を見た。
「ああ、そんな気持ちで言ったのではないが、父ちゃんは口下手だから…
が、大輔、お前の気持を考えているのは本当だ。
お前がいい奴だと言うことは知っている。
しかし、俺もふしだらな母親から生まれ祖父母に育てられた。
安城のおばさんや日名のおじさんはいい人なのに、
お袋のだらしない生活態度に腹を立て、
俺には優しくしてくれたが…
俺も憎んでいたのだが、皆がお袋をけなしているのを見るのは辛かった。
いつまでも家から離れず,当然のように祖父母の世話になり、俺の事はほったらかし。
自分はまともに働かず昼間から酔っ払って…
挙句には男を作ってしばらく家に戻らなかった。
そんな女から生まれた子供はどうすればいい。
祖父は叔父、叔母の気持を先走って母を叱ってばかりいた。
祖母はそのたびに泣いて謝っていた。
真理子が産んだ子供をそんな目に遭わせたくない。
俺には孫に当たるが… 正式な子供として育てたい。
それには大輔の気持は不可欠だと思っただけだ。
それにな… どういうわけか広志がその子供を欲しがっているのだ。」
父の本心に、切ないような心になっていたが…
最後の言葉に、複雑な感情を抱いていた大輔と、聞き役だった孝輔は、
それまでの気持を忘れたように二人で顔を見合わせている。
広志さんが… どうして広志さんが。そんな事は一度も聞いた事が無い。

