「ただ、真理子のことは…
あいつが反省もしないで、ばあちゃんを顎で使っている事が嫌なだけだよ。」
大輔は父に向かって話していたが、
真理子のことになるとチラッと孝輔を見た。
姉の事を真理子と呼んで…
孝輔は何もいえない。
「そのことだが… 真理子が赤ん坊を産むと言うのならそれでいいと思っている。
確かに真理子のことだから本当に母親になれるかどうかは疑問だが…
それも含めて好きにさせてやろうと思っている。
真理子が俺の母親のように産むだけ産んでほったらかしにするようなら、
きちんと俺の養子にする。
真理子のことはこの二年間放っておいた父親の責任もある。
それに生まれてくる子供には罪は無い。どうだ、駄目か。」
どうやら孝太は前々から真理子のことを考えていたようだ。
言い出せなくて、というのもおかしいが、
二人に話すきっかけがないままきていたらしい。
それが今、いきなり真理子の話題が上がり…
この際、とばかりに話し始めている。
真理子の妊娠は知っていたが、赤ん坊の事は頭になかった二人だ。
急いで頭を回転させている。
「今70のお母さんには無理でも、俺はまだ50前だ。
赤ん坊が成人しても70だ。健康でさえ居れば70でも働ける。
今の野崎の仕事振りなら、
大きな工事現場は無理でも,個人的な頼まれ仕事なら出来る。
足が少し不自由でも正一さんのように無理をしないで働く方法もある。
俺はそうしたい。しかし、
そうすると言う事はお前たちの戸籍が汚れる事になる。
それと、やはりこれから先、お前たちにどんな形で迷惑がかかるか分らん。
俺は大丈夫と思っていても… 特に大輔、
お前が野崎を継ぐようになれば、
お前は子供が成人するまでは俺と一緒にその子とも暮らさねばならない。
その事でお前の気持が気がかりだ。」
孝太は大輔の気持を聞いたばかりだから、余計に気になるようだ。
父親なのに子供に気を使っているのが伝わって来る。

