自分は同じ双子でもそんな風に考えた事は無かった。
ただ自分の道を歩くだけで精一杯だった。
大輔には困った時だけ甘えていただけだ。
だけど今ならわかる。
大輔も母に甘えたかったのだ。
自分と真理子だけを可愛がり、
剣道に走った大輔を見向きもしなくなっていた母…
それはわかっていたが、自分も、
大輔はいつも元気な双子の兄としか見ていなかった。
和也はいつまでも赤ちゃんのように、
僕は父ちゃんがだーいすき、と誰の前でも言っていた。
父もそんな和也に嬉しそうな顔をして応じ、
中学生になるまで抱っこやおんぶ、肩車をしていた。
リビングで座っていれば和也は必ず父の膝に入り込み、
すぐに安心したような顔をして寝てしまう。
父が苦笑しながらいつも部屋へ運んでいた。
体が小さかったと言う事もあるが…
誰が見ても二人の絆は強かった。
そんな中に、淋しいからと言って大輔が入り込む隙は無かった。
野崎の職人達もみんな和也を可愛がっていた。
自分たちは母の手前,寄り付きもしなかった。
今ならはっきりとあの頃の大輔の気持が分る。
孝輔は改めて大輔の顔をのぞいている。
「父さん、そんな事はもう言うなよ。
俺、今はとてもいい気分になっている。
俺、やっと将来の道が見えて来た。
広志さんの話で… 自信はまだ無いけど、やってみようと言う目標は出来た。
夏休みにはアルバイトもさせてくれると言っていた。
だから昔の事は、確かに淋しいなあと思ったことはあったけど、
広志さんは昔の嫌な思いはリセットしていると言っていた。
俺もそうした。」
と、大輔ははっきりと父に自分の気持ちを告げている。

