「ところで大輔、今度はいつだ。県大会なら名古屋だな。」
「うん。来月の第一日曜日に名古屋体育館、お城の近くだよ。」
「そうか。今度は皆で行くからな。」
「ああ、頑張るよ。だけど… その前に試験があるから、その方が大変だ。」
と、大輔は大げさに嘆くパフォーマンスをして皆を笑わせた。
が、それは将来野崎組で働く事を決めた大輔にとっては本心だった。
勉強もしっかりやり大学の建築学部に入ることが目標。
大輔には、まだ二年生と言えどもおろそかにはできない事だった。
「父さん、真理ちゃんのことは。」
新しい学校は今までとは雰囲気が全く異なっているが、
孝輔が案じていた、自分の醜聞を取り上げて口にする級友もいない。
緊張の日々だが、今のところは平穏に過ごしている。
そして数日経った夕食後、孝輔は突然、
同じ家にいると言うのに、一度も自分たちと顔を合わさない
真理子のことが浮かんで来た。
祖母たちが部屋に戻り、片付けを終えた則子も姿を消した頃、
まだ一人になりたく無いような気持のまま、三人がリビングへ移った時だった。
いつもその頃になると、父は寝転んでテレビを見るのが常だ。
孝輔は自分のことは何とかなりそうだと気持ちが落ち着いた時、
無性に真理子のことが気になってきた。
家族に心配をかけてしまった自分が、
真理子の事を言い出すのは気がひけたが、思い切って父に尋ねた。
母がいた頃は、大輔より自分のほうが真理子と同じ時間を共有していた。
今回の事は,真理子の世をすねた生活から出たことかも知れないが、
結局は自己責任、はっきりと断わらなかった自分に責任がある。
だから真理子を恨むのは…
大輔が真理子を嫌っているのは分る。
だけど今皆が見放したら真理子はどうなる。
未成年で妊娠して… 態度には出さないがきっと心細く思っているだろう。
部屋から出ないで… 同じ家に住んでいてもまともに顔を合わせていない。
水木の祖母としか話さないと聞く。

