「転校生はいじめられるのかい。」
やはり年長の朝子が気がかりそうな声を出して孝輔を見た。
いじめ… 昔孝太もいじめられ登校拒否にまでなり、しばらく家に籠っていた。
そんな事が思い出されたようだ。
「おばあちゃん、心配は要らないよ。
僕は和ちゃんや大輔のように空手や剣道はしていないけど、
僕だって成長しているのだから。
僕だって、バイオリンが好きだけど野崎組の息子だよ。
うまく言えないけど… 何だか強い心の持ち主になれるような気がしている。」
そういう話し方だって大輔と比べれば弱々しさが出ている。
が、確かに孝輔の中では少しずつ何かが変化していた。
広志と話すようになり、自分を取り巻いているいろいろな事を知り…
それだけでも成長したように感じる。
自分よりもっと悲惨な人生に立ち向かって生きている人が身近にもたくさんいる。
どうにもならない人生を背負っている人もいる。
自分のことは、自分で解決可能な事。
転校に関する不安など些細な事のようにも思えるようになって来た。
実際は難しいことかも知れないが、
自分で何とかしなければならない事だと思う孝輔だ。
突然大輔がさも特別の話がある、
と言うような顔をして口に入っていたものを大げさに飲み込んだ。
「そうだ。孝輔のことは心配要らなかった。
だってね、孝輔は今まで隠していたけど…
本当は孝輔って和ちゃんに似ているんだよ。
今日、俺の事応援してくれたでしょ。
その時の応援の仕方、まるで和ちゃんが来ているように感じた。
俺、試合中に発見しちゃって、急におかしくなって、
笑うのを堪えるのに大変だったよ。
孝輔は自分で気付いていないようだけど、
実は和ちゃんと同じようなDNAを持っているのだよ。」
「そんな事、ないよ。」

