「野崎、大丈夫か。午後の団体戦、出られるか。」
孝輔の出現が珍しく、驚きの眼を並べて見ていた仲間達、
案の定二人の会話から、大輔の怪我の副作用を案じ、
心配そうな顔をして取り囲んでいる。
野崎が出なければ皆の士気にも影響する。
口には出さないが、顧問の高橋を初め関係者の間にそんな考えが頭をよぎっている。
が、大輔は周囲の気持など感じないかのように、
孝輔に温かいものを感じている。
自分のところまで駆け付け、肩に湿布を張っている孝輔の行為に、
驚きと嬉しさの入り混じった気持ちだ。
そう、大輔は微笑みながら、
孝輔のする事を第三者のような気持で見ていた。
「はい、これで安心だ。午後も頑張ってね。
僕、こんなに興奮して応援するのって初めてだよ。
応援しすぎて喉がからから。でも、すごく楽しい…
これからはいつも応援に行くよ。
あ、坂上さんも来ているよ。」
孝輔は改めて優勝直後の興奮が甦り…
柄にも無く、大輔の高校の剣道部員たちが周りにいると言うのに、
目を輝かせながら素直に自分の気持ちを出している。
大輔たちのようなスポーツ少年の中に入れば、
顔色の悪さが如実に表れるところだが、
興奮して顔が紅潮している孝輔、
今ばかりはその影は無かった。
「ああ、孝輔の声、なんだか和ちゃんのように聞こえた…
すごく力を貰ったよ。」
大輔は面白そうに笑いながら孝輔を見ている。
「和ちゃん… そんなことおかしいよ。
僕と和ちゃんは声質が違う。」
孝輔は大輔の言葉に引っかかり、
自分がどこにいるかも忘れて大輔に詰め寄っている。
自分が和也と同じところはどこにも無い。
和也のような天真爛漫な行動力は…
どう逆立ちしても出来る筈が無い。
そんな事は皆が分っている事だ。

