「エイ。ヤアー。トウッ。」
試合が始まると、威勢の良い気合いと共に竹刀のぶつかり合う鋭い音が
あちこちから上がり、高校生剣士たちの躍動感あふれる、
機敏な動きと熱気で会場内は盛り上がっている。
三人は大輔の西部高校チームが陣取っている場所の後ろ、
並べられていた応援者用イスに座り、
手に汗を握りながら応援している。
高杉の予想通り、午前中の個人戦で大輔は決勝戦まで楽々と進み出ている。
「あと一人ですね。」
楽勝のように見えても、孝輔は一戦一戦緊張しながら応援していた。
こんな熱気の中で、自分が大声を出して大輔を応援するなんて信じられない。
が、声をからして大輔の名前を叫んでいる。
一戦勝てば立ち上がって拍手しながら、また名前を呼んでいる。
その頃には春香の存在も完全に忘れている孝輔だった。
喉がからからに干上がってしまったような感じだが、
体の中から熱い思いが湧き上がり、じっとしていられない気持だ。
今までは、騒ぐのははしたない、
じっとしていなくては良い子と呼ばれない、
母さんが嫌がる… そんな生活をして来た。
しかし今、孝輔は身体中から湧き上がっている興奮を爆発させながら、
必死に大輔を応援している。
ヘロインに怯える孝輔もどこにもいない。
気持が良い… どうして今までしなかったのだろう。
大輔は僕にとって大切な兄なのに。
「やっぱり大輔は強い。高杉さんが言ったとおりだ。
二日前までギブスをはめていたなんて信じられない。」
いつもは冷静な広志も大輔の活躍に興奮して喜んでいる。
見れば、春香も顔を紅潮させて応援している。

