広志さんは誰もが認めている野崎の総務部長だ。
自分は野崎孝輔、とび職人・野崎孝太の息子だが、
果たしてそんな風に思ってくれる人はいるだろうか。
大輔は未来が見えている。
ここを居場所として、努力次第でいくらでも羽ばたける。
広志さんの側にいれば… いつかは和ちゃんにも認められる。
和ちゃんだから、弟、としては疑問だけど、
少なくても野崎組の野崎大輔と承認される。
僕は… 僕だけが…
またネガティブな思いに陥っていた。
それから二日後。孝輔は毎日広志のいる事務所に来ていた。
時々は落ち込む事もあったが、
広志との時間が楽しくてたまらなかった。
一番大きな収穫は、それまで意識的に、蚊帳の外に置いていた和也の存在が、
広志の口から何度でも聞かされたことだ。
兄と言うイメージとは無縁だが、
何故か、とても身近に感じられる。
人間として、とても素晴らしいものを持っている、と言う事が伝わってきた。
たまに姿を見ても、四歳下の孝輔の目には、
相手構わず、傍若無人に勝手なことを言っている、
きかんきな子供に見えていた。
しかし、悟さんや広志さんには天使だったんだ。
二十歳の今、自分の居場所を複数確保して、
スマートに生きている。
戻ってくれば、皆を驚かし…
そうじゃあない、あれが和ちゃんの家族への愛情表現だ。
十六歳の自分が言うのはおかしいが、どう見ても子供っぽい。
それでも、する事はきちんとしている。
どうして今までそれに気付かなかったのだろう。
広志さんの言葉ではないが、
和ちゃんたちは、鳶になれないとびの子。
その分、周りから野崎を見ているんだ。
自分も、どう逆立ちしてもとびにはなれない。
何とか、この状態から脱皮しなくて、
居場所を見つけなければ。
何となくポジティブな考えになっている孝輔だ。

