銃声が聞こえた時点で外の警察官達も動いたようだ。


二人が出ようとしていると、大勢の警察官が流れ込んできた。


沢山のパトカーや覆面車が周りを取り囲んでいる。


そして二人に向かってまず、たまたま岡崎警察署に来ていた、
県警の組織犯罪対策5課の刑事が、
礼を言いながらヘロインの入った鞄を受け取った。



「あの… お二人で。」




豊橋警察署の警部らしき男が、
驚いたような顔をして広志に尋ねている。


丸腰の、それも一人は見るからにひ弱そうな二人が、
橋本商事の中にいたかなりの数の男たちを、確実に動けないようにしていた。


信じられない話だ。


銃声が聞こえたから橋本はピストルを構えて二人に向けたはずだ。

それなのに二人は無傷だ。


岡崎警察署の警部らしき人物も、二人に礼を言いに来た。



「どうって事は無いが… 野崎の名前は全て伏せてくれ。
俺たちは野崎のもんに、それも16歳の少年に、
無理やりヘロインを飲ませたことに対して腹が立っただけだから、
騒がれたら困る。

手柄はあんた達で分けてくれ。一番はあのパトの二人だぜ。
二人がうまく動いてくれたからやり易かった。なあ、広志。」



あきらは、孝輔のことは警察の知るところとなっているはずだから、
あくまでも被害者と言う形を崩さず、もっともらしく話している。


そして、まだ遠巻きにパトカーの傍に居る二人の警官の方を見て
満足そうな笑みを浮かべた。



「はい。こちらの思ったとおりにしてくれました。」



広志もあきらの言葉に合わせた。


実際は何もしなかった。

それが良かったということだ。