19の夏~私の愛した殺人鬼~


☆☆☆

 冬我の話を聞いた沙耶香はキュッと唇をかんで俯いた。


 思い出される、霊安室での昌代の姿。


 一瞬足元がふらつき、木製の手すりにつかまった。


 その時、前を歩いていた幸也から手が差し伸べられた。


 顔を上げると、相変わらずキツイ目元の無表情な顔がこちらを向いている。


「ありがとう」

 と呟くように言うと、沙耶香は素直にその手を握った。


 最初に感じたとおり、細くて綺麗で、だけどしっかりとした強さを持っているように感じる。


 とても、暖かい。