☆☆☆ 冬我の話を聞いた沙耶香はキュッと唇をかんで俯いた。 思い出される、霊安室での昌代の姿。 一瞬足元がふらつき、木製の手すりにつかまった。 その時、前を歩いていた幸也から手が差し伸べられた。 顔を上げると、相変わらずキツイ目元の無表情な顔がこちらを向いている。 「ありがとう」 と呟くように言うと、沙耶香は素直にその手を握った。 最初に感じたとおり、細くて綺麗で、だけどしっかりとした強さを持っているように感じる。 とても、暖かい。